第12回 個人や自営業が使って便利な文書管理ソフトとPDF

「ドキュメント・マネジメント・システム」

公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)*1によると、文書にはライフサイクルがあり、その管理をするシステムを「ドキュメント・マネジメント・システム」と呼んでいるそうです。
文書のライフサイクルを管理するツール、日本語では「文書管理システム」とでもいえばよいでしょうか。現実の世界では、本や雑誌、チラシや手書きのメモ、電子化された文書、Webの情報、メールなどありとあらゆる情報を管理しないといけないわけです。
その中でも、紙と、紙を電子化したような文書、例えばWordやExcelなどのファイル管理が特に重要です。今回はこの「文書管理システム」で最も普及していると言われるソフトウェアとPDFの関係についてご紹介したいと思います。

文章のライフサイクル

日本生まれの文書管理システム「DocuWorks」

おそらく日本で最も普及している文書管理のためのソフトウェアは、富士フイルムビジネスイノベーション(旧社名:富士ゼロックス)が開発販売している「DocuWorks」ではないでしょうか。発売は、オフィスにもパソコンが浸透しはじめた1996年で、それから30年近く進化を続けています。
「DocuWorks」は「電子の紙」の使い勝手に「超」が付くほどこだわっています。紙の特徴には、情報の記録だけではなく、束ねたり自由にメモを書き込むなど独特の使い勝手の良さがあります。こうした紙の特性を研究して開発された「DocuWorks」は「紙の使い勝手を電子の世界でも実現」しようとしたソフトウェアだと感じます。
富士フイルムビジネスイノベーションのホームページによると「DocuWorks」は2021年2月時点で累計770万ライセンスが販売されているそうです。

「DocuWorks」でできること

「DocuWorks」専用のファイルにはフォルダのような感覚で別のファイルをいれることができます。WordやExcel、スキャンしたファイルなどを「DocuWorks」専用のファイルひとつで管理できます。そのファイルを「DocuWorks」で開くと、中に含まれるファイルが机の上のような場所にサムネイル表示され、さらに各ファイルの中身をその場所でみることができます。しおり(ふせん)を付けることができ、そのページをペラペラめくることもできるので、まるで紙を扱っている感覚で電子ファイルの閲覧・管理が実現できます。

「DocuWorks」とPDFの関係

「DocuWorks」が普及する背景には、文書の電子化という事情があるわけですが、それは同時にPDFの利用が盛んになることも意味しています。「DocuWorks」は2006年ごろからPDFの表示・作成機能やコメント追記などができるようになり、PDFとの親和性を押し出します。
PDFの取り扱いができるようになり、「DocuWorks」の普及をさらに後押しすることになるのですが、それとはまた違う動きも出てきます。PDFが普及しはじめ、PDFをメインに据えた文書管理を考えはじめると、「DocuWorks」独自のファイルではなくPDF単体で同様のことができないかという期待です。
実は、このアイデアで文書管理システム市場を狙ったソフトウェアがいくつか市販されていましたが、残念ながら、この10年ほどの間にいずれも市場から撤退してしまいました。

PDF単体で実現できる文書管理機能「PDFポートフォリオ」

「DocuWorks」専用のファイルはフォルダのような感覚で別のファイルを取り込むことができるとお話しましたが、実はPDFにも同様の機能があることをご存じでしょうか。
PDFのポートフォリオ機能は、まさにそのような機能を形にしたものといえるでしょう。
ほとんど知られていないPDFの利用法のひとつですが、それはまるで「DocuWorks」に対抗するために作られたような印象を受けます。
PDF-XChange Editorもこの機能を利用できます。以下、簡単ですがPDFポートフォリオの作り方・使い方をご説明します。

  • 「ファイル」メニュー→「新規ドキュメント」→「PDFポートフォリオ」と選択していきます。
  • 「PDFポートフォリオの作成」ダイアログが表示されます。ここでPDFポートフォリオに追加したいファイルを選択します。フォルダ内のファイルを一括して取り込むこともできます。[OK]ボタンをクリックすると、「新しいPDFポートフォリオ」を作成します。
  • 「ファイル」メニュー→「名前を付けて保存」を実行します。新規のPDFファイルとして保存することができます。
  • 作成したPDFポートフォリオは、「ポートフォリオ」メニューなどの機能を使うことで、フォルダやフォルダーの追加・削除、ファイルの閲覧や取り出しなどが可能です。検索機能も使えます。

PDFポートフォリオを持つPDFは、外見上は普通のPDFと変わりません。ただ、PDFとして閲覧できるのは表紙といわれる部分だけです。
実は、このPDFポートフォリオを扱えるソフトウェアはPDF-XChange Editorなど一部の高機能なソフトウェアに限られています。このことがPDFポートフォリオの普及を妨げている原因のひとつでもあると考えられます。PDFポートフォリオの中に含まれているファイルやフォルダーは、PDFポートフォリオをサポートしているソフトウェアでのみ扱うことができることに留意してください。

PDFが社会のインフラとしてここまで広く認知されるのに30年かかっています。PDFを開発した当初、よもやPDFが電子商取引の証憑になるとは想像もしなかったでしょう。これからもPDFがどのように使われるか、普及するのかを予測することは困難です。今は全く利用されていないと思われるPDFポートフォリオ機能も、将来どこかで花開くときがあるかもしれません。

*1:JIIMAは日本マイクロ写真協会を起源とする公益法人。文書情報のマネジメントに関するさまざまな活動を行っている。

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