クリエイティブ・インスパイア

現代美術の専門誌を中心に事業展開する「美術手帖」と、簡単に本格的なデジタルペイントが楽しめるペイントソフト「openCanvas」によるコラボレーション企画です。5名の若手アーティストが、「openCanvas7」を用い、新たな表現を切り拓きます。そこではどんな化学反応が起こるのでしょうか。openCanvasで作品を制作したその手応えに迫ります。

vol.2 大島智子さん

高校生ばかり描くのは、
憧れが強いからなのかもしれない───

高校生

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イラストレーター、マンガ家として様々なシーンで注目されている気鋭の作家・大島智子さん。都会の片隅で生きる女の子たちの日常の繊細さを丁寧に描き出す大島さんに、ペイントソフト「openCanvas(以下、oC)」を使っていただきました。

境目がなくなる男の子と女の子

── 女の子を描かれることが多いですが、今回はなぜ男の子に挑戦されたのですか?

大島 いままでは男の子にあまり興味が持てなかったんですけど、最近、彼らのなかにも(関心の対象となるものが)なにかあるのかもしれないって思い始めて、それで描いてみました。

── 男の子のなかでも高校生を。

大島 はい。とくに意味はないんですけど、最近ずっと動画共有コミュニティ・アプリの「TikTok」を見ていて、そのなかにこういう制服を着崩した感じの男の子たちがいたので。

── 女の子が利用している印象が強かったのですが、男の子もTikTokをやっているんですね。

大島 男の子の動画もいっぱい流れてきます。男の子同士で抱き合って仲良くしている動画もあって、見ているとだんだん女の子との境が……。

── なくなってくる。

大島 はい。だから、あまり意識はせず、いつも描いている女の子を男の子に置き換えて描いた感じです。モチーフの探し方は『セッちゃん』(「CanCam.jp」で大島が2018年に連載していたマンガ)とあまり変わらないですね。登場人物のなかに「あっくん」という男の子がいて、当初、彼はもっと特徴のない男の子にする予定だったんです。でも描いているうちにどんどん性格が悪くなっていって。それで、(自分は)男の子も絵にできるんだ、って思うようになりました。

── 切ないシチュエーションを多く描かれているように感じます。そういうことは意識されているのでしょうか。この男の子2人の距離の近さを見ていると、親密な関係なのかな、と背景を考えてしまいます。

大島 TikTokを見ていると、みんなめちゃくちゃ距離が近くて。ネットだから「いいね」欲しさにベタベタしている、という人も多いのかもしれないですけど、可愛いなって思っちゃうんです。でも、もしかしたら距離が近いのは画面に収まるためなのかも。

大島 ネットですごく好きな絵を描いている人を見つけたんです。少しBL(ボーイズ・ラブ)っぽい雰囲気はあるけど、ナチュラルに男の子同士を描いていて。今後はこういう人が増えていくのかなって思います。

── BLとしてではなく、普通に男の子同士を描いている。

大島 うん。BLとは違う。BLも読んでみたんですけど、高度な脳みその使い方をしないと、読み込むのが大変でした。

── 大島さんの絵では、描かれている背景もどこか切ないですね。

大島 背景は近所の風景で、ちょっと田舎ですね。写真を撮りに出掛けて、玄関がいいなと思って採用しました。あと、たまたま手前にあった柵が、境界線のようで気に入っています。具体的な意図はないのですが、光を配置したら意味深になるかなって。

―― 高校生までは地方に住んでいらしたんですよね。

大島 そうですね。栃木の、田舎のど真ん中でした。社会が狭くて、まだ携帯電話も半分くらいの人が持っていないような。インターネットもほとんどなかったので、情報も入ってこない。だから本当にクラスのなかにしか社会がなかったんです。私は高校にあまり行っていなくて、たぶん、ぜんぜん馴染めていなかったですね。だから大学は、外を受験しました。もしかしたら高校生くらいの子ばかりを描くのは、憧れが強いからなのかもしれないです。妄想することで、取り戻しているのかも。

撮影=細倉真弓

多様な表現が可能なブラシツール

── oCを使ってみて、技術的にはどうでしたか? いつもと違ったところなどはありましたか?

大島 いつも、線はシャープペンシルで描いて、それからPCで着色しているのですが、今回はデフォルトのブラシの筆圧をオフにして、線画からPCで描きました。

── 絵の所々にあるドットのような部分などを見ると、ビットマップブラシもご自身で作成されたのですか?

大島 最初は自分でつくったブラシを使いました。でも後半は、もともとあったブラシを筆圧とアンチエイリアス(ジャギーを目立たなくする機能)をオフにして使っていて、色を付けるときに、またビットマップブラシをつくりました。

── アンチエイリアスをオフにすると、ファミコンのドット絵のような雰囲気になりますよね。それはあえてそうしたのでしょうか。

大島 ギザギザした線が好きなんです。マンガ家の山本直樹さんもすごく昔のソフトを使っていて、あえてギザギザした線を描いている。そういうのが好きです。

── oCを使ってみて、ここが使いやすかったというのはありますか?

大島 資料を見ながら作業ができる資料ウィンドウが良かったです。いつも使っているペイントソフトだと、画像を同じスクリーンのなかで小さく表示したかったら、別にアプリを入れたりしないといけないので。あとはブラシの直線描画オプションも、ブラシの描写をサポートしてくれて良かったですね。

Profile

イラストレーター、映像作家。2010年からイラストを元にしたGIFアニメをTumblr上に公開。どこにでもいるような女の子の繊細さやアンニュイな雰囲気の絵が特徴で、女性を中心に強い支持を集めている。17年に初の個展「パルコでもロイホでもラブホでもいいよ」(GALLERY X BY PARCO)開催。18年にはマンガ家としての活動も開始。「CanCam.jp」にて『セッちゃん』を連載した。

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