第17回 電帳法やAIに適したPDFを作る方法

電子帳簿保存法に適したPDFを考える

PDFの製品を販売していると、そのサポートとして様々なお問い合わせをいただきます。その中でPDF自体に問題がある案件をたびたび経験します。PDFは、Adobe社が最初に公開した時から仕様が公開されていて、その仕様に沿っていれば自由に作ることができます。
電子帳簿保存法の要件を満たすPDFを考えたとき、当然のことながら画面上で証憑として必要な文字列が判読できる必要があります。しかし、今後のことを考えると、実際にはそれだけでは不十分でしょう。ファイルの内容(文字列)をコンピューターのプログラムが正しく取得できことが何より重要です。そうすることで、電子文書のメリットでもある、文書検索が可能になるからです。
また、PDFだけの話ではありませんが、文字の表示がおかしくなるもあり得ます。人間が目で見て文字が確認できなくなるということは、電子取引の前提条件が破綻しているといっても過言ではないでしょう。
電子帳簿保存法の要件である検索を実現するため、ファイル名に最低条件として日付や取引先、売上などを記入したとします。その後、税務調査で証憑に記載してあった内容を具体的に確認するため、改めてファイルを開いた際に内容が読めないといったことは十分あり得ます。
このことは、電子帳簿保存法だけでなく、例えば社内の電子データの全文検索やAIを活用するような場合にも配慮すべき点です。
こうした問題を防ぐためにも、電子文書のデータの仕様制限や作成手順の最適化・ルール化が今後ますます求められる時代になると考えます。

これからはPDF/Aが主流に

皆さんはISO(国際標準化機構)をご存知でしょうか。日本でいうとJIS(日本工業規格)が有名ですが、その国際版と思っていただければいいでしょう。PDFはISOの管理規格である「ISO 32000」という国際規格になっています。この規格はいわば大風呂敷のようなもので、あんなPDF、こんなPDFといったように好き勝手に様々なPDFを作ることが可能です。しかし、特定の用途のPDFを考えたとき、勝手にいろいろな作り方をしたPDFでは困るため、特定の用途に合わせて、PDF内の情報の持ち方など、条件を限定する必要が出てきます。こうしたPDFは、ルールを決めてその指示に従った作り方をする必要があります。
PDFをベースに用途別に仕様を決めたISOの管理規格で、公共やビジネス用途で使うためのPDFとして最近注目されているのがPDF/A(ISO 19005)です。PDF/Aの最後の文字のAはアーカイブ(Archive)のAです。文書の長期保存のためにPDFに求められる要件を規格化したもので、企業や官公庁が組織のため、あるいは広く配布するPDFが長期に確実に利用できることを保証することを目指しています。
当記事ではPDF/Aの詳細についてはご紹介しませんが、ヨーロッパで積極的に活動しているPDFアソシエーションが公開しているPDF/Aに関する日本語の資料がわかりやすいので、こちらをぜひご覧ください。

PDF/A コンピテンスセンター(現在のPDFアソシエーション)の日本語リーフレット

PDF/Aを作ろう

一般的にPDFを作成する際の手順は、下記の様に大きく二つあります。

仮想プリンターを使う

PDFを出力できる専用の仮想プリンターを使って、印刷する手順でPDFを出力します。印刷のデータをPDFのイメージデータに変換すると考えるとわかりやすいでしょう。印刷ができるほぼすべてのソフトウェアでPDFを作成できます。

PDFを直接作成する

プログラムを使ってPDFを直接出力する方法です。

「PDF-XChange Editor」をインストールすると、仮想プリンター「PDF-XChange Lite」が利用できるようになります。この仮想プリンターはPDF/A方式で出力することができません。
その代わり、「PDF-XChange Editor」では既存のPDFファイルをPDF/A形式で再保存してくれる機能があります。PDFを作成した後、再度PDF/A形式で保存するため、PDF/Aが必要なユーザーにとっては冗長な手順になりますが、すでに手元にあるPDFをPDF/Aにしておきたい場合には、この方法が便利です。

今回ご紹介するPDF/Aの作成方法は、「PDF-XChagne Editor」の上位製品である「PDF-XChange PRO」に同梱されている仮想プリンター「PDF-XChange Printer Standard」を使う方法です。この仮想プリンターなら、プリンターのプロパティ設定画面で出力したい規格を選択するだけでPDF/Aを作成することができます。

「PDF-XChange PRO」で作るPDF/A

下記は、パソコンのプリンター「PDF-XChange Printer Standard」のプロパティ画面です。
「PDF-XChange Editor」で利用できる仮想プリンター「PDF-XChange Lite」はシンプルで、そこがウリでもあるのですが、「PDF-XChange PRO」は非常に高機能な仮想プリンターが使えるようになります。
印刷をする際にプリンターとして「PDF-XChange Printer Standard」を選び、プロパティ画面を表示させます。次に左側の「一般」をクリックすると下記の画面になります。

「PDF仕様」の「準拠する仕様」と書かれているプルダウンメニューからPDFの仕様を選択できます。

PDF/Aを出力する手順はたったこれだけです。設定を保存したり、オプションを追加するなど、使いやすい工夫を行うこともできます。
PDF/Aは大きく1から3まで、さらに細かくa、b、uを選択できますが、PDF/A-3bを選択しておけば、ほぼ問題ないでしょう。

自動で作るPDF/A

「PDF-XChange PRO」をインストールすると、自動処理ツール「PDF Tools」を使用できるようになります。「PDF Tools」を使えば、フォルダ内のファイルを一括でPDF/Aに変換するといったような自動処理が実現できます。

様々な作られ方をするPDF

PDFは誕生から30年を超える技術で、公開された仕様を自由に使えることから、PDFを作成したり加工するプログラムが有償無償含め、数多く存在しますが、長い間メンテナンスがなされず放置されているプログラムも多いとみられています。技術者の力量不足等で、仕様が変わったことに対応できていない、あるいは仕様の解釈や判断のブレと思われるケースも見受けられます。そう考えると、手軽に使える無償のソフトウェアやWebサービスの利用は、ちょっと怖いなと思いませんか?
業務でPDFを作る場合、PDFの品質というものが重要です。残念ながらPDFファイルは一見して内部のデータの品質を判断することができません。このPDFの品質を良好に保つためにも、PDFを作成したり加工するソフトウェアの選択は重要です。
「PDF-XChange Editor」「PDF-XChange PRO」は最初のバージョンのリリースから2022年で25周年を迎えます。長い間の実績と世界中の多くのユーザーに支えられ、日々高品質なPDFを生み出している「PDF-XChange Editor」「PDF-XChange PRO」をこの機会にぜひ、検討してみてください。

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